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ユウ さん

10月も下旬のことだった。滅多にこない館の電話に呼び出し音が鳴った。机にいたアタシは慣れない声で博物館ですと応えた。
今は苫小牧に住む女性で、新聞をみて電話したという。長らく東京で映画関係の仕事をしていたのだと。声の感じからアタシより年配の方だと聞き取れた。あるテーマのドキュメンタリーを撮りたいのだがという相談だった。場所は室蘭で、それは16mmのフィルムで撮りたいのですと。長いあいだフィルムに慣れているからだと言う。詳しくは面談のうえでといい、何度も○○ユウと申しますと漢字まで説明し名乗った。今は少し体調を崩しているので、11月に入れば落ち着くと思うからお訪ねしますと電話を置いた。
苫小牧から登別へはJR特急に乗れば30分ほどの時間だ。して駅からここまでゆっくり歩いても3分だ。もう少し詳しい話しをきいて、応援できることならなんでもしてやりたいとアタシは思った。内容に沿ったカメラマンを紹介したり、ここにあるフイルム機材達だって久しぶりの撮影本番活動を喜ぶだろうとも考えた。ただ今どきのフィルム撮影はフィルムの入手や現像も不自由で高額だ。音も付けるとなると現場の人手もかかる。たとへ短い作品でも数百万はかかるだろうにと考えた。
なぜいま苫小牧に住んでいるのかや、室蘭にかかわるどんなテーマ内容で、などは聞き逃した。初対面電話ではそこまで踏み込めない。悔やまれるのは彼女の連絡先や電話番号を訊かなかったことだ。たとえ訊いても教えてくれたかどうかは分からない。

つまりその電話以後、ユウさんから再度電話が来ることは無かったし、当然来館されることも無かった。アタシが不在だったり、留守電をこまめにセットしていないこともありえるが、考えられるのは体調の回復が思わしくないという理由だろうか。もちろんアタシが短い電話で信用されなかった、ということも考えられる。それにいまは冬季閉館中だ。そしてこのHPを見ている確率はほぼ無い。

たとえ実現しなくても、彼女の話しを聴いてやれなかったことが、力になれなかったことがなんだか悔しい、寒い年の瀬です。
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プロフィール

BIN山本

Author:BIN山本
私は、「登別映像機材博物館」の館主です。
「登別映像機材博物館」は私たちが今まで現場で使用してきたビデオ放送機材やフィルム機材を俯瞰し、その変遷の躯体をもって動態保存展示するものです。映像ソフトが時代の文化だとするなら、それを生み出したハード機器(撮影機材や再生機材、編集機材、音声機材)もまた文化遺産だと考えています。
 映像機器メーカーでも放送局でもなし得ない、町場のプロダクションが最近まで使用してきたVTRやビデオカメラをはじめ、フィルム機材を含めた放送機材の変遷史ともいうべき動態機材展示です。そのつもりで仲間のプロダクションなどの協力も得て、少しずつ集めておりました。入場無料、日本で唯一の『映像機材総合博物館』です。
 多目的ステージもあります。是非一度お立ちよりください。

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