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マリーゴールド

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〔館前のマリーゴールド〕

過日、館内の電話呼び出し音が鳴った。まだ10時の開館前だった。この博物館にある固定電話のベルが鳴ることはほとんど皆無だ。ショックだったのは冬季閉館中のほぼ4ヶ月もの間にも、ただの1件も留守電が入ってなかったのだ(笑)まあたいていの場合知り合いなどからはメールや携帯の方へ連絡がくるのでそうかも知れないが、館内へ未知の方からの電話がなかったことは寂しい話だ。
電話は室蘭からのご婦人からだった。今朝の室蘭民報をみて電話したという。その先週末に記者さんの取材があったのだが、それが今日の朝刊に載ったのは知らなかった。訊くと8mmの件だった。映写機が壊れていてフイルムが見えないという。ならばそれをDVDにテレシネすればいつでもお手軽にみれると思いますがと言うと、いやこの映写機で見たいのですと言う。なるほどそう考えても異論はない。では持ってきていただければ修理など出来るかもしれませんと伝えた。
すると1時間もするとそのご婦人は映写機を抱え、1巻のフイルムを持ってやってきた。CHINON社製の本体外部にとりついたスクーリンに直接投写するタイプだった。お手製のキルティングのカバーがかけられていて、長い時間が経過したほどには汚れも無い。ACコードをつなぎ慎重に電源を入れてみると動きには問題ないが映写ランプが切れている。スペアで持っているランプと交換、内部の清掃と調整をしてフイルムをかけてみた。するとご婦人の40年前ほどに撮ったお子さんたちの映像が見事に映っている。あまりにも懐かしい映像にご婦人は涙目になった。実はそんな8mmの撮影をする前にご主人は亡くなられていたという。当然ご主人は映ってはいないが、いまはもう40才は過ぎたであろう女の子がかわいい。なんだかアタシもガラにもなく胸が熱くなった。映写機を大事に持っていて、この映写機でみたいという理由が分かった。
修理代はいくらですかと聞かれたので相場の映写ランプ代3000円ですというと、ではご婦人は郵便局へ行ってくるという。表に出て100メートルもない郵便局を指し示すと、ではちょっと行ってきますと歩いて行った。
戻るとアタシに5千円札をだす。では2千円のおつりをというと、受け取ってくれない。これは気持ちですと・・・
名刺を渡し、調子が悪くなったらまたいつでも来てくださいといい、お互いになんども頭を下げた。車の後ろ座席に映写機を乗せて、お名前だけでも聞かせて下さいというと、室蘭の「I」です名のられた。

館前の花壇には近所のおばさんがいつの間にか一年草のマリーゴールドの花を植えていてくれた。別な花の手入れのとき、いつもありがとうございますとお礼を言うと「いいのいいの、私が勝手に好きでやっていることだから」と手を休めない。

その日はお客も普段よりは多くしかもDVDが2枚も売れ、気分が良かったことは言うまでもない。たとえ来館者がゼロの日があろうと挫けないのは、こんな日があるからだ。
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BIN山本

Author:BIN山本
私は、「登別映像機材博物館」の館主です。
「登別映像機材博物館」は私たちが今まで現場で使用してきたビデオ放送機材やフィルム機材を俯瞰し、その変遷の躯体をもって動態保存展示するものです。映像ソフトが時代の文化だとするなら、それを生み出したハード機器(撮影機材や再生機材、編集機材、音声機材)もまた文化遺産だと考えています。
 映像機器メーカーでも放送局でもなし得ない、町場のプロダクションが最近まで使用してきたVTRやビデオカメラをはじめ、フィルム機材を含めた放送機材の変遷史ともいうべき動態機材展示です。そのつもりで仲間のプロダクションなどの協力も得て、少しずつ集めておりました。入場無料、日本で唯一の『映像機材総合博物館』です。
 多目的ステージもあります。是非一度お立ちよりください。

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